4月14日新国立劇場の「アンドレア・シェニエ」を見た。今回の公演は2005年制作のプロダクションの再演である。私はこの時の公演を見たのだが、どうも記憶が曖昧で、どんな演出だったのかよく覚えていない。今回の公演はじっくりと見ることにしよう。
このアンドレア・シェニエというオペラ、個人的には大変お気に入りの作品である。最初に「アンドレア・シェニエ」を見たのは1982年の年末年始、初めてイタリア旅行をした時で、ミラノ滞在の折、ホテルのコンシエルジュにスカラ座のチケット手配を依頼し、闇ルートでチケットを入手することが出来た。その時の演目がアンドレア・シェニエである。12月7日の初日は、ホセ・カレーラス(シェニエ)、アンナ・トモワ=シントウ(マッダレーナ)、ピエロ・カップチッリ(ジェラール)という豪華キャストだったが、私が見たのは翌年正月の6日。キャストも随分と代わっており、ニコラ・マルティヌッチ(シェニエ)、ステフカ・エフスタティエヴァ(マッダレーナ)、アントニオ・サルヴァドーリ(ジェラール)という配役。指揮は若きリッカルド・シャイーだった。
このオペラの楽しみは、各幕の要所に置かれたシェニエ、マッダレーナ、ジェラールの情熱的で美しいアリアだが、とりわけタイトルロールのシェニエのアリアに聴衆は興奮する。ニコラ・マルティヌッチは、当時ヴェローナやスカラ座を中心に大活躍していたテノールで、ラダメスやカラフと並んでシェニエを当たり役にしていた。マルティヌッチはカレーラスよりも声質が太く強靭なリリコスピントだが、その輝かしい高音の魅力は他に例えようがなくまさに、シェニエに打って付けのテノールだった。私は彼のシェニエを聞いてこのオペラの魅力に目覚めた。